足跡MV完成!

Merry Shone3枚目のアルバム”Collective”に収録されている足跡。この曲は元々2016年に作った曲だ。当時「東日本大震災から5年の節目としてダウンロード配信用に震災をテーマに曲を書いて欲しい。」と、当時のプロデューサーから話があった。正直私は天災などを歌にする商法が好きではなかった。人の不幸からインスピレーションを受けて曲を書きお金にするというのが嫌だった。しかし、せっかくのお話しだしプロデューサーとも震災後に縁あって出会った人の一人だし、曲を書くか決める前にまずは当時の事をしっかり調べようと思った。東日本大震災の時、私も仙台にいて被災者ではあったが、だからと言ってもっとより多くの人の当時の姿、気持ちをきちんと知ってからじゃないと簡単に曲にするのはあまりにも申し訳ないような失礼なような気持ちだったからだ。すると”自分の好きなアーティストが自分達に向けて歌ってくれて救われた”というような記事を多く見かけた。私が”商法”と感じていたものが”力”になっていたんだと知った。私は震災で何も無くしていない。大切な人も場所も全て無事だったからそう思ってたんだ。多くのものを無くした人にしたら自分達に向けられた歌がどれほど救いだったか、そこに助けられていたことか…と気づいた時、自分の偏った考えが物凄く恥ずかしくなった。そして改めてプロデューサーからお話しがあり曲を書くことにした。しかしテーマがテーマだけに物凄く難航した。何度もピアノに向かっては”違う” “こうじゃない”の繰り返し。そんなある日ふと頭の中に夕日に照らされる陸前高田の奇跡の一本松とそこに立つ一人の人の後ろ姿のシーンが頭に浮かんだ。以前、一本松とその近くにあった慰霊ドームのような所に足を運んだことがあり、おまり広くないドームの中に入った瞬間の空気が凄まじく鳥肌が立ち足がすくんだ。怖いとか悲しいとかの負の空気ではなくそこに足を運び手を合わせた人たちの祈りや願いが溢れていてその空気の圧が苦しかった。ドームから出たあとなんの感情か分からない涙がでた。”辛さ”は今の時間軸であって”祈り”は過去に対して捧げられていて”願い”は未来に向かおうとしている。そう強く感じ、しばらく鳥肌が止まらなかった。

頭に浮かんだ一本松、夕日、海、人その映像から何が出るのかとピアノを弾き始めた
「愛を知った3月の風 君を連れていった」
ピアノと一緒に出てきた歌詞とメロディに驚きつつもどんな曲が自分から出てくるのか止めることなく身を委ねた。「私の曲はフィクションです。そこに多少なりとも深層心理が反映しているとしても。フィクションならフィクションにしか出来ない曲にしよう。最後はハッピーに、しっかり前を向けるような、フィクションだからできる曲にしよう。」と、取り組んだ。そして出来上がったのが足跡。作った感想としては「……重いなぁ…」だった。(笑)そして予想通りリスナーからの反応は綺麗に別れた。”凄く好き”と言ってくれる人、”重くて今の自分には…”と言う人。それを聞いて「ですよね〜」ってなった。(笑)元々テーマ自体がナイーブだったことと私自身この曲が軽々しく歌えるものではなかったためライブでは3月限定で歌っていた。

今回Collectiveをレコーディングしていた時、最終確認で足跡を聞いていたら「この曲、重いなぁって感じていたけど客観的に改めて聞いてみるとそれだけな曲じゃないんだなぁ。」と気付いた。そしてアルバム制作と併せてofficialサイトとMVの作成も決まっていて、MVをどの曲で作るかを相談していた。私としてはパラレル映像化も見てみたかったがパラレルのテーマになっているのが”宇宙” “時空” “空”とあまりに抽象的すぎて構想が難しい…と断念。すると「足跡が良い」との声があがった。重くないかなぁ?と、思いつつ以前ほどの抵抗は減っていたこと、またこの曲は実在する場所のシーン(一本松と海)から生まれた曲だからイメージはしやすい。と、足跡に決まった。撮影場所は海と決めていたがこの曲のきっかけになった一本松での撮影は更にこの曲に震災の業を負わせることになるし、ナイーブな作品になってしまう。そもそもこの曲のテーマは東日本大震災であったとは言え”そこから前を向いていく姿”を描いた歌。そこを映像にして欲しい。そこで上がったのが2022年にフェスで伺った相馬の商店街だった。度重なる震災から何度も何度も立ち直り復興した街の美しさ。人の強さと暖かさが感じられて大好きなに場所なった街だ。
MV制作を担当してくださった永井慎之介(Spiderwow Works)に強く伝えたのが「このMVは私が主役ではなく、そこに暮らし生活を続けている人たちを主役にしてください。私はそれを語る語り部のような存在でいいんです。この曲の物語の主役はそこに暮らし立ち直ってきた人たちなんです。」すると永井先生は「ドキュメンタリー風でいきましょう」とイメージを共有してくれた。
撮影前にロケハンしに行き海の撮影スポットや商店街への協力を得て、いよいよ撮影となった。冬の海風は強く(確か1回目は1月に行った)海のシーン撮影後に食べたラーメンがめちゃくちゃ美味しくて温まった。その後商店街を撮影しに行くと店同士みんな知り合いでどんどん他の店に繋がって行き予想以上に色々な場所や人と出会い撮影する事が出来た。もうこの温かさに更に相馬好き!ってなった。(笑)この日夕方のシーンが天候的に撮れず別日での撮影となってこの日は終了。そして翌月、日中の海のシーンを撮り終えて一度場所を移しまた夕方海に戻ってきた。「ここのシーンでは商店街を周ってきた私(人々の暮らし担当)と演奏している私(語り部担当)がここで同じ場所に立つみたいな、違う世界線だったのが一つになるみたいな感じにしたいんです!」と、下手くそな説明を理解して納得してくれた永井先生。(本当感謝)撮影を終えようやくひと段落。そして完成した映像を見た時ストーリー性もイメージもバッチリで自分のMVでありながら感動した。そこから手直しを経て今回の公開へと至りました。
そこで暮らす人々の強さ明るさが感じられる映像と歌の世界観が見事に一つになり歌以上の説得力を持つ作品です。
沢山の人、場所、時間に感謝でいっぱいです。見てくださったみなさんの心に重くでも同時に清々しさを感じてもらえたらと思います。
 
伝えたい事が多く大変長いブログとなってしまいました。ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
 
このMVが沢山の人に愛されますように。